「皮」と「革」はどちらも「かわ」と読み、「牛皮」と「牛革」などどちらも一般的に使用されている言葉です。
しかし、レザー製品において皮と革には明確な違いがあり、そこには革製品を作る上で欠かせない「鞣し(なめし)」という作業が深く関係しています。
この記事では、皮と革の違いや、革の特徴を左右する鞣しの種類、基本的な鞣しの手順もご紹介します。
革と皮の違いは鞣しの有無で変わる
皮と革は、鞣しと呼ばれる腐食を防ぐ加工を施したかどうかによって使い分けられます。
生の状態を皮、鞣し加工を終えた状態のものを革と呼び、英語では前者を「skin(スキン)」、後者を「leather(レザー)」といいます。
レザーは、「鞣し革」と訳されることからも、鞣し加工を施されたものであることがわかります。
革という漢字は、動物の皮を両手でピンと横に張る、という古代の鞣し加工の手法が由来となっています。
「革命」や「改革」という言葉にもこの漢字が用いられているように、「改める」という意味を持つ漢字です。
したがって、革とは皮の性質を改め、変化させたものといえます。
鞣しとは?
鞣しの種類
植物タンニン鞣し
植物タンニン鞣しは、植物の樹皮や幹、葉、果実、根などに含まれるタンニン(渋み成分を用いた鞣しです。
古代エジプト時代から存在するといわれる、最も古く伝統的な鞣し製法です。
他の方法と比べて時間とコストがかかるため、高価になってしまう傾向がありますが、革の魅力である経年変化を最大限引き出すことができ、環境にも優しいというメリットがあります。
クロム鞣し
クロム鞣しは、1884年に実用化された比較的新しい手法で、化学薬品を使い、短時間かつ低コストで革を大量生産できる鞣し製法です。
耐久性と伸縮性に優れ、扱いやすい点が魅力ですが、その一方、経年変化を楽しむことができないというデメリットもあります。
コンビネーション鞣し
コンビネーション鞣しは、異なる鞣し方を組み合わせた鞣し製法で、基本的には植物タンニン鞣しとクロム鞣しの組み合わせが多く見られます。
植物タンニン鞣しとクロム鞣しの特徴を併せ持つため、野球のグローブやブーツなど、高い耐久性と経年変化が求められる製品に使われることもあります。
アルデヒド鞣し
アルデヒド鞣しは、グルタルアルデヒドなどを用いた鞣し製法です。白み帯びていることから、「wet-white(ウェットホワイト)」とも呼ばれています。
ソフトな鞣し効果が得られますが、クロム鞣しを施した革よりも耐熱性が低くなります。
また、アルデヒド鞣しには、魚油(伝統的にはタラの肝油)が酸化することで生まれるアルデヒドを用いて鞣す方法もあります。
この鞣し製法を施した革を「セーム革」といい、多孔質で、水分を吸収しやすい性質を持ちます。
鞣しの基本的な流れ
鞣し加工の工程には、皮を水につけて脱毛する下準備、染色や加脂といったさまざまな作業があります。
鞣しの種類によって細かい作業は異なりますが、基本的な流れは同じです。ここでは、一般的な鞣しの手順を見ていきましょう。
1. 皮を水につける
革製品の原材料である動物の皮を剥いだ「原皮(げんぴ)」を「水づけ」し、「生皮」に戻します。
原皮は、国内外のさまざまな屠畜場から、脱水された状態でタンナー(鞣しを施す業者)の元へ輸送され、水づけの工程で、皮に付着している血液や汚物などの汚れを取り除き、清潔な生皮の状態にします。
2. 皮の脱毛を行う
生皮の状態にしたら、石灰液と硫化ナトリウムに浸漬し、毛穴を拡張させて脱毛を促します。
革に独特の柔軟性があるのは、この工程で繊維がほぐれ、全体がやわらかくなるためです。
再度、石灰液に浸すことで、ソフトレザーやスエード調のような柔軟性に特化した革を作ったり、石灰液を使わずに脱毛して硬い革を作ったりすることができます。
3. 皮を分解・脱灰・酵解・浸酸
脱毛しやわらかくなった皮を分割機で分解し、沈着している石灰を取り除く「脱灰」を行います。
アルカリ性だった皮が中性になり、その後、「酵解」で余分なタンパク質を分解除去します。
最後に、皮を酸性にするため行う工程が、「浸酸」です。すべての工程を終えた皮を「ピックル皮」と呼びます。
4. 皮に鞣し剤を浸透させる
ピックル皮を鞣剤(じゅうざい)とも呼ばれる、鞣し剤に浸透させます。
皮の内部繊維の結合を安定させて固定し、耐熱性と耐久性を与えます。
5. 革を染色する
鞣し剤の浸透を終えると、皮が染色を行える状態の革になります。
染色には、染料で着色したり、スプレーやハケを使って塗装したりするほか、機械でプリントする方法などがあります。
また、革の内側(芯)まで染色する「芯通し」、表面だけを染色する「表面染色」など、染色する範囲によっても革の風合いやツヤが変わり、印象が左右される大切な工程です。
6. 革の加脂を行う
染色後、乾燥して硬くなった革に生油や合成油脂を加え、揉んでやわらかくする工程を「加脂」といいます。
加脂をすることで、乾燥による革の硬化を防ぎます。
※染色前に加脂を行う場合もあります。
7. 革を乾燥させる
仕上げの前に革を自然乾燥、または熱風乾燥させます。
どの程度乾燥させるかによっても、革の手触りに影響するため、絶妙な塩梅やコツが必要となります。
8. 革の仕上げを行う
塗装によるツヤ出しや型押しなどの加工を施し、仕上げを行います。
仕上げの種類は「カゼイン仕上げ」「アニリン仕上げ」「カバリング仕上げ」など多数存在し、仕上げ方によって革の耐久性や光沢などが変わります。
製品に対しては皮と革、どちらを使う?
BONAVENTURAおすすめの革製品
BONAVENTURAとは、イタリア語で「幸福」を意味する言葉です。
BONAVENTURAの名前には、「身近なアイテムを上質なものに変えたら、より幸せを感じられる。その幸せを届ける存在でありたい」という願いが込められています。
ここでは、そんな幸福を願うブランドであるBONAVENTURAのアイテム中でも、おすすめの革財布をご紹介します。
長く愛用できる革製品は皮を鞣して作られている
皮を長持ちさせるために鞣し加工を施すことで皮が革に変化します。
この鞣しの工程や種類によっても、革の風合いや耐久性などの特徴は大きく変わってきます。
違いを知ることで革製品の品質や特性を理解できるようになり、よりアイテム選びを楽しみながらお気に入りの製品を探すことができるでしょう。
長く使い続けられる革製品をお探しの方には、150年以上の歴史をもつ名門老舗タンナーの上質な本革を採用したBONAVENTURAの革製品がおすすめです。
違いを知ることで革製品の品質や特性を理解できるようになり、よりアイテム選びを楽しみながらお気に入りの製品を探すことができるでしょう。
BONAVENTURAの公式サイトから、お気に入りの一点を探してみてはいかがでしょうか。